春は過ぎて、桜は散る…だがいつか、

春は過ぎて、桜は散る…だがいつか、


[数十年後の桜宮家]

「礼佳ちゃん…そろそろお別れらしいですね…」

「そうみたいやね〜…」

「後悔は…無かったですか、貴方はこの人生…笑顔で生きていけましたか?」

「無いよ〜・・・って言ったら嘘になるけど」

「そうですか、聞かないでおきます」

「ありがと〜^ ^・・・眠くなってきちゃった、おやすみ…」

「ふふっ、おやすみなさい………」

せめて今は笑顔でいよう、彼女が亡くなった後…思い切り涙を流そう。

【紫はただ彼女の手を握っている、その手にあった温もりは少しずつ抜けてゆき、冬の雪を思わせる冷たさを感じていた】

「…ヒグッ……グスッ、ウワァァァァァァ…………」

堪えて、耐え続けてきた何かが胸を溢れ、涙が頬を伝う。

(あの時、みんな笑顔だった…でも、置いて逝かれることはわかっていた…でも、私はみんなといたあの時が人生でいちばんの幸せだった…)

【朝日が上り、彼女は外に出た】

「眩しい……あの桜…礼佳ちゃんみたい…………」

「?あ、雨…」

【雨…いや狐の嫁入りによって桜が散っていく】

「…比喩でもしようとしてるの?…急に雨が降ったって事は春の終わりが近づいていってるのかな…」

彼女の生から見れば、刹那の如き思い出を彼女は思い返す、絶対に忘れてしまうことがないように…

「沢山、思い出ができたなぁ…春の花見、夏の祭り、秋は本を読んで、冬は…大掃除だっけ?」

(あの時から、私は冬を好きになった…いや、季節全部が)

【風が吹き荒れ、桜の花びらが舞っていく】

「綺麗…………でも散っていく、だけど、季節のように…春が去りて、夏が来て、秋が来て、冬が来る…そして、また春が来る…それを繰り返していくこの世界で…いつか、いつか、新しい貴方に出逢ったら……ここで言おう…」

「ありがとう、桜宮礼佳…いや、皆…俺に優しくしてくれて…俺を“人間”にしてくれて…礼佳ちゃんだけじゃない、新しい貴方達に俺は逢いに行くよ。」

「皆……____」

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